王国(あるいはその家について)/草野なつか(2019)
素描のような質感だった。忘れることのできない表情と声色があった。それがいつの表情か、私はもう忘れてしまった。
続きを読むボーイ・ミーツ・ガール/レオス・カラックス(1984)
空間の分断に出色した映画だった。地点Aと地点Bを結ぶものがカットといえば当たり前かもしれないが、その当たり前が優れているからこそ言及に値する。
続きを読む四季 ユートピアノ/佐々木昭一郎(1979)
知人がこの映画を「大事なことがすごい速度で過ぎ去って、出会いも別れも同じような。生は流動的と言ってたけどその通りで、生きることが音楽みたいな」と言っていた。うろ覚えだから厳密には違うけど、良い感想だった。その言葉に牽引されて本作を観た。
続きを読むイメージの本/ジャン=リュック・ゴダール(2019)
「イメージの本」は大半が既存の映像や言葉で構成されている。故に映画は言葉でも音でも映像でもないことが示されてしまった。じゃあ映画とは何か。本作にその問の答えを求めればアーカイヴになるが、過去の集積から逆説的に提示可能な未来が映画だと思う。未来は未知と換言しても良く、コラージュの精度の高さ(私が何を以って高いと判断しているか私にもよくわからないが、高い確信がある)から成る快感は自分がインスタレーションに取り込まれたようなきらいもある。視覚で捉えて脳で処理するよりも何ステップか早い刺激であり、その感覚は体験という語が近い。色調を弄り、切って張ったと、あなたが言いたいならそう言えば良いが、きっとそうはさせない凄みがある。
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