東京安全鴉

サーカス

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 こう、掌を天井の蛍光灯に透かしてみても、全く血潮は見えずに黒い影だけが見えます。長く伸びた爪の輪郭が青白く見え、肝心の爪は汚れてるせいか白く透けません。

 そうやってしばらく手を、開いて、閉じて、開いて、閉じて、を繰り返してみたものですが特になにも変わらず、血潮も見えず、影に染まった手が開いて閉じただけでした。あまりにも赤く見えないので、僕には血が通ってないのかなぁ、悲しいなぁ、とか思いますが、思えば昔から君は心がないとか、薄っぺらいとか言われてきましたね。けど流石の僕もそこまで言われると少し傷つく、とか、残念だなぁ、とか思うもので、このまま一生変わらないのかなぁ、と思ったりするけど、そういう退嬰的な思想だから、変われないのです。心機一転笑顔の練習でもしてみようと、鏡に向かって、へへっ、と笑ってみたけど口角何て上がらずにひきつった笑い、白痴。どこから見ても卑屈、苦笑い、これはひどいなぁ、と思うがこれは僕の視点で、他者の目に触れれば違うのか、と考えて喫茶店にいきました。

 書店の横にある喫茶店で、店内はどこか古風です。曲名の思い出せない洋楽なんてかけてあります。メニューを見て、味なんてわかりませんがこのブレンドコーヒー、を頼むことにしました。ご注文はどうなさいますか?このブレンドコーヒで。はい、かしこまりました。なんてやりとりをして、やった、僕の笑顔は不自然じゃなかった、と有頂天になり、運ばれてくるコーヒーを飲むとなかに入っていたのはミミズ。うぎゃあ、ミミズだ、と騒ぐも店内の喧騒にかき消されます。さすがにこれには面食らって、店員さん、これ、ミミズですよ。はい、そうですね。皆さんこれを飲むんですか?はい、多分。と言われてしまっては飲むしかない。ごくごく、と飲んでると、何だか上機嫌になります。ねぇ、店員さん。はい。このコーヒー美味しいね。はい、有り難うございます。ねぇ、よかったらこのあと食事でもどう?残念ながらそれはできません。一生ミミズでも啜ってろ、人間の屑。

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