東京安全鴉

サーカス

10

 ピックを噛んでいた。うめぇ、うめぇ、と言いながら。

 深夜に目覚め、生ぬるい水道水でデパスを20錠ほど飲んでからの記憶がない。ガムを噛んでいたはずなのに気づいたらピックになっていた。果たして、用量を守っていればガムはガムのままだったのか。

 体はとても怠く、じめじめとした汗で体は濡れていた。顔を洗いたいと思い、洗面所へと向かう。途中、誰のか分からない髪の毛や埃が足にまとわりついてきた。体からは汗が止まらない。壁にもたれかかりながら、這うようにして進む。粘液のような汗、蛞蝓のような僕。暗い中を、いつまでも、いつまでも這い続ける。洗面所はまだ見えない。

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