駄文学日記

サーカス

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はいどーも!僕はキズナアイさんを心からお慕いしています。まぁ、バーチャルな存在の先駆けである、ちゆ12歳はもっと好きですが…みなさんもちゆ12歳読んで下さい。

突然ですが、インターネットで出会った人々と過ごしたり、生きていれば何回かは面白おかしく、怖い体験をするものです。ですよね?まぁ、そういう類の話です。

それでは、前口上はこのくらいで。

 

中学二年生の秋だった。

その頃僕はオカルトにハマっていた。今も好きだが、当時は民俗学に今よりもドップリ浸っていた。更に、民俗学から風土伝説、風土伝説から妖怪、妖怪から心霊、というように好みは変わっていき、僕の中でオカルトへのブームが絶頂に来ていた時期だった。今思えばよくも、まぁ、ビビリな僕がそういう類に興味を持ったな、とは思う。心霊スポット巡りなども一度もしたことが無い、生粋のビビリなのだ。

インターネットをやっていると「界隈」という概念が出てくる。例えばオタクだとか、更に何のオタクだとか、細分化されていく。僕はその中で所謂オカルト界隈に属していた。

インターネットが普及してからオカルトはめっぽう廃れた。人数も多くはなく、界隈の人間は全員知り合いの様な、悪く言えば閉鎖的、よく言えばアットホームな雰囲気だった。

そこで知り合った人間の一人が隣県に住んでるらしく、割りと親しくなった。

自分より少し年上で、「あの赤橋は出るってマジ?」「一号橋の下の廃ホテルが僕の県では一番ヤバイ」「件の病院に行って狂った知人がいる」などの、地元民故に詳しいオカルトの話をしては盛り上がった。その中で一つ、興味をそそるものがあった。

「犬」の霊が見えるというのだ。人は聞くが動物の霊とはあまり耳にしない。しかも、かなりの確率で、一匹だけではなく何匹も見れるらしい。人が見える、という噂もあったが、多くは矢張り「犬」だった。このご時世、調べたらわかると思ったが全く検索にかからない。好奇心が膨らみ、僕は彼と落ち合い、そして件の場所に行く約束を取り付けた。

当日、適当な喫茶店で彼と会った。彼は常に笑顔を浮かべていた。ネットでの印象とはあまり相違無かったが、その笑顔はあまり好ましいものではなかったのを覚えている。笑顔が顔面に張り付いてるみたいだった。

「で、犬が出るって本当なんですか?」

「あっ、つそうですね、正確には人も出るんですけど犬の方が圧倒的に多いんですよ」

二人共腰が低く、如何にも初対面という感じだ。

「具体的に犬種とかってあるんですか?パグとか、柴犬とか」

「うーん、多分、雑種じゃないですかね…あ、でも一匹だけ確実にチワワがいるんですよ、チワワが」

「チワワ?」

チワワとはなんとも、可愛らしい霊ではないか。死んだチワワが吠えもせず、ただそこにいる光景を想像するとどこか滑稽で、思わず笑ってしまう。

その後数時間程オカルトの話題で盛り上がり、日も落ちかかっているので、例の場所に行くことにした。

喫茶店からバスと徒歩で十数分、住宅街を少し離れた森林公園、とまではいかないものの、そこそこの大きさの公園だった。人は誰もおらず、雰囲気だけはあった。

遊具のブランコが風で微かに揺れている。時折、通りかかる車の音が遠くに聞こえた。

「で、僕は何をすればいいんですか?物を供えるとか、どこかに目を凝らすとか」

「いえ、何もしなくても普通に見えますよ。まぁ、あまりそういう類のものが見えない体質なら、いっそのこと目を閉じるのもアリです。視覚から入る情報は膨大ですからね。それをシャットアウトして、聴覚やら嗅覚に全てを任せる、というのも方法の一つです」

なるほど、と思い助言に従った。

目を閉じる。薄暗い太陽で、瞼の血管が透け、世界が赤黒く染まる。通りゃんせの歌が聞こえる。信号機の音らしい。

通りゃんせ、通りゃんせ、かごの中の鳥は、いついつ、出会う、鶴と亀が滑った

後ろの正面だぁれ

数分間目を閉じていた。風が、鋭くなる。だが何も聞こえないし何も臭わない。揺れる木々の音だけで、犬の鳴き声など皆無だ。

いい加減、飽きてきたので目を開けた。太陽は沈みかけ、もう黄昏時だった。

彼を見ると期待していたように「どうでしたか?」と聞いてくる。夕闇で顔があまり見えない。誰そ彼、黄昏時。だが相変わらず笑顔がこびりついてるのだけは分かった。

「なにも、ありませんでしたよ」

失望が相手に伝わるように、わざと意地悪く言った。

「そもそも、この噂の出処ってどこなんですか?ネットにもでないし、他の人に聞いても皆知らないの一点張りですよ。犬がだめなら人だと期待したけど何も見えないです、どこで聞いたんですか本当に…」

どうせ、知人に聞いただとか、従兄のお兄ちゃんに聞いただの、所謂「又聞き」系の噂に過ぎないと思った。昔工事があって、大人が子供を近づけない為の嘘、それが世代を跨いで、地元の子供では鉄板の噂。大方そのような所だろうとあたりをつけた。

「うーん、見えないはずはないんですけどね…」

「でも見えないですよ」

「犬がその形をとどめている、とは僕は言ってませんよ。本当に見えないんですか?」

段々、イライラしたきた。

「だから、見えないものは見えないんです。そもそも原型をとどめてないって言うならなんでチワワとかわかるんですか?ただの肉塊なら犬の区別もつかないでしょうに。貴方、噂だけは詳しいんですね。本当に貴方も見たんですか?というか、いつからこの噂はあるんですか?」

「噂は数週間前からです、間違いありません」

彼はうーん、おかしいなぁ、見えないのか、うーん、と独り言をぼやいている。あまり良い心地はしない。

「誰が言い始めたんですか?というか、犬の死因ってなんです?大昔ここに屠殺場があった、とかでしょ、どうせ?」

「いいえ、それは、違う」

彼の笑顔が、暗闇でも分かるほどに変貌し、一気に真顔になった。

 

 

 

「だって俺が殺したから」