東京安全鴉

サーカス

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貴方、学生でしょ?学生って顔してますもんね。私ですか?私は只のサラリーマンですよ。いや、サラリーマンだったというのが正しいですね。何となく会社を辞めたんですよ、アハハ。辞めたら妻と娘は家を出ていって、それから数カ月経ちます。当然収入もなくて、仕送りなんて出来ないんで、養育費とかそんなもんすっぽ抜かしてるんですよ。そしたら娘から風俗嬢になったと連絡がありました。更に現金数万円が送られてきました。申し訳ない、とか、哀しいという気持ちは勿論あるんですよ。思えば会社にいた頃は馬車馬のように働いて、何も楽しくないのにひたすら働いてました。家族の為でしょうね。考えると狂いそうになるので、ひたすら働いて誤魔化していた訳ですが、何となく疲れて、ぽいっと辞めました、アハハ。それからは起きて、本でも読んで、酒飲んで、寝るという生活をしていたのですが、そりゃあ妻も娘も出ていくわけですよ。そして、今は娘の金で私はお酒を飲んでいるんです!別に旨くもないのにただ飲んでいるんですよ。忘れるために呑むんです。何を忘れたかったかはもう忘れました!こういう場所は常に紫煙が揺らいでますよね。揺れている煙に蛍光灯の光がぼやけて、それをずっと見つめていると、なんだか娘の顔が思い浮かぶんですよ。でも明確には思い出せないんですね。どこか輪郭が朧気なんです。泡沫の女になってしまったからでしょうか?別にそういう職を否定しているわけじゃないんですよ。でもなんか、少し哀しいなぁ、とか思うわけです。まぁ、今は全部失ったから関係ないんですけど。いやぁ、気楽なんですよ、何もないってのは。これはこれで幸福なんです!ハレルヤ!アハハ!アハハハ!

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