2023-01-01から1年間の記事一覧
素描のような質感だった。忘れることのできない表情と声色があった。それがいつの表情か、私はもう忘れてしまった。
「鏡」は、文脈上では断裂するイメージを、タルコフスキーという"私"の視点を中心に接続することで、それらがクロノロジカルにもアンチクロノロジカルにも成りうる、視点の可能性追求に感じる。加えて言えば「ノスタルジア」もそうだろう。逆説的に、文脈の…
空間の分断に出色した映画だった。地点Aと地点Bを結ぶものがカットといえば当たり前かもしれないが、その当たり前が優れているからこそ言及に値する。
至って真面目に妄執に駆られる人間をクローネンバーグは描いてきたが、本作での人物もといクローネンバーグの妄執は、有機性だろう。開かれることと言っても良い。
知人がこの映画を「大事なことがすごい速度で過ぎ去って、出会いも別れも同じような。生は流動的と言ってたけどその通りで、生きることが音楽みたいな」と言っていた。うろ覚えだから厳密には違うけど、良い感想だった。その言葉に牽引されて本作を観た。
少女は音楽を愛していた。私は音楽を愛していないから、作中でパッヘルベルのカノンが流れるタイミングでの映像と物語の兼ね合いから少女は音楽を愛していたと推測するに過ぎないけど、愛で済ませられたならばまだマシなもっとどうしようもないものも音楽に…
「イメージの本」は大半が既存の映像や言葉で構成されている。故に映画は言葉でも音でも映像でもないことが示されてしまった。じゃあ映画とは何か。本作にその問の答えを求めればアーカイヴになるが、過去の集積から逆説的に提示可能な未来が映画だと思う。…
屍より腐臭たちこめる夏、皆様はいかがお過ごしでしょうか?(無い季節の挨拶) 最近の僕は市場で母を拾い、隣人を殺し、裏切りに味をしめていました。 あとは新作を観るお金が無く、旧作の映画を観てばかりいた。60本程度を観た気がする。前置きはこの位で。